春日雑詩 袁枚 千枝紅雨萬重煙 畫出詩人得意天 山上春雲如我懶 日高猶宿翠微巓 (PCにない旧字は常用漢字を 用いています)
千枝の紅雨 万重の煙 画き出だす詩人 得意の天 山上の春雲は我が懶の如く 日高くして猶お宿す翆微の巓
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牛山香流氏画 |
【通釈】 起句 多くの木々の枝からくれないの雨のように散りしきる花びらと、幾重にも重なる ように棚引く春がすみと、 承句 まるで詩人が最も好む一幅の風景画のようだ。 転句 山上に懸かっている春の雲は、私のものぐさに似て、 結句 日はすっかり高くのぼっているのに、依然として山の八合目あたりに宿ったまゝ 動こうとはしない。 【語釈】 紅雨 くれないの花びらの多く散るさまを雨にたとえていう形容。 煙 かすみ。もや。 得意 自分の心にかなうこと。心地よいこと。 懶 おこたる。なまける。ものうい。 翆微 山の八合目あたり。 【押韻】 平声 、先韻、 煙、 天、 巓。 【解説】 袁枚(1716‐1797)は清朝中期の文人。字は子(し)才(さい)、号は簡齋。錢塘(浙江 省)の人。少にして才名あり、進士及第、官途につき各地の長官を歴任。 退官の後、江寧(南京)の小倉(しょうそう)山(ざん)山に園を作り随円と名づけてここ に住み、吟詠、著作を事とし盛名を得、八十二歳で没した。 この詩は袁枚の代表作の一つで美しく且つものうい江南の春景色を美事に詠じた佳作です。 以上 (玉井幸久) |