夜雪 白居易 已訝衾枕冷 復見窻戸明 夜深知雪重 時閒折竹聲 (PCにない旧字は常用漢字を 用いています) 已に訝る衾枕の冷ややかなるを 復た見る窓戸の明らかなるを 夜深くして雪の重きを知り 時に間く折竹の声
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牛山香流氏画 |
【通釈】 起句 寝床についても仲々寝つかれず、夜着(よぎ)と枕もとがいやに冷めたいなあと いぶかっていると、 承句 ふと見る窓辺が、明りのように白くなって来た。 転句 夜がふけるにつれて、雪がだいぶん積ったのであろう、 結句 時折り、雪の重みで折れる竹の音が静寂を切り裂くように聞こえてくる。 【語釈】 夜雪 夜間に降る雪。夜の雪。 訝 いぶかる。あやしむ。おどろく。 衾枕 寝衣とまくら。夜具。 窻戸 窓と戸。 折竹 雪が積って折れた竹。又 雪の重みで竹が折れること。 【押韻】 平声 、庚韻、 明、 聲。 起句は踏み落とし。 【解説】 白居易(772-846)、字は楽天。中唐を代表する詩人。 この人の詩はすでに平成28年6月に「對酒」を、また同年10月に「村夜」を鑑賞しました。 此の詩は、作者45歳の元和11年(816)、左遷されて江州(江西省九江)に在住していた 時の作。 寒夜、つめたい夜具の中に寝もやらず不遇の身を横たえる作者の姿が、窓外の雪かげと、 時々 折竹の音の聞こえる静寂の裏(うち)に目の前に浮び上るように描かれた佳作です。 詩は起句、承句を対句とし、「已訝」「復見」で体感と視覚によって寒さを強調し、結句 では聴覚にうったえて静寂を強調するという美事な構成となっています。 以上 (玉井幸久) |