【通釈】 起句 山寺の僧が碁盤をはさんで対局している、
承句 盤上には竹の清らかな葉かげがおちている。
転句 竹林におおわれて、誰も見る人はいない。
結句 時どき碁石を打ちおろす音が聞こえるばかり。
【語釈】 池上 池のほとり。この場合は池のほとりの邸又は亭の意。
山僧 山寺の僧。
對棋坐 囲碁の対局をいう。
局 棋局は碁盤。
子 棋子は碁石。
【押韻】 平声、庚韻、淸、聲。
【解説】 白居易(七七二‐八四六)。字は楽天で、は中唐を代表する詩人。この人の詩は
本欄でもすでに数多く鑑賞している。
白居易は晩年太子賓客という名誉職を与えられたが、その数年前から洛陽に隠棲し、
仏教に帰依して自ら香山居士と称し、香山寺の僧と親交を楽しんだ。この詩はその
頃(六十四歳)の作とされている。詩中の山僧は恐らくは香山寺の僧と作者自身で、
香山寺の僧房かあるいは白居易邸での対局の様子を詠じたものであろう。
白居易晩年の悠々自適の心境と生活ぶりをしのばせる作品で、心静かに鑑賞したい
佳作です。
(玉井幸久)
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