冬日田園雜興 范 成大 榾柮無煙雪夜長 地爐煨酒煖如湯 莫嗔老婦無盤飣 笑指灰中芋栗香 中国語による上の詩の朗読 |
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田原健一氏画 |
【通釈】 起句 木ぎれは煙も立てず勢いよく燃えて、長い雪の夜はふける。 承句 床下の地中に切ったいろりに埋めて燗をしてある酒はもう湯のようにあたたかい。 転句 皿に盛ったおつまみが無いなどと、ばあさんを怒ってはいけないよ、 結句 彼女がにこにこし乍ら指さしている灰の中に、芋や栗が香ばしく焼けているではないか。 【語釈】 榾柮 木のきれはし、こっぱ、ほた。 地爐 地に切ったいろり。 煨酒 灰に埋めて酒をあたためる。 嗔 いかる。 盤飣 盤に食物を盛る。飣は食物を盛ること。 【押韻】 平声 七陽韻 長、湯、香。 【解説】 范 成大 (1126- 1193)は南宋の有能な愛国政治家であり詩人。 二十九歳で進士及第。官吏の途を歩み終に宰相となり四十九歳の時、北方の金に使し皇帝を 前に堂々と困難な交渉に当った。 晩年は郷里 蘇州に隠退し、四季の農民の暮しぶりを詠じた連作 「四時田園雑興」六十首を 作った。この詩はその中の一首で、冬の夜のつましい農民の楽しみ詠んだもの。 農民への愛情のこもった佳作です。 (玉井幸久) |