雜詩
        王維

   君自故鄕來

   應知故鄕事

   來日綺窗前

   寒梅著花未



    (ざっ)()    (おう)()

   (きみ)()(きょう)より(きた)

   (まさ)()(きょう)(こと)()るべし

   (きた)() ()(そう)(まえ)

   寒梅(かんばい)(はな)()けしや(いま)だしや

 中国語による上の詩の朗読朗読
田原健一氏画

    【通釈】 起句 あなたは私の故郷からおいでになった。
             承句 きっと私の故郷の消息をご存知でしょう。
             転句 あなたが出発された日、私の妻の飾り窓のある部屋の前の、
             結句 寒梅は、もう花をつけていたでしょうか。

    【語釈】 雑詩 特定の題のもとに作られたものでない詩を意味する。
            應  まさに・・・すべしと読む。推量を表す。
             綺窗 あや絹などを張った美しい飾りのある窓。女性の部屋のある窓。
             未  句末に用いて疑問を表わす。

    【押韻】 去声、寘韻、事。 未韻、未。 通韻

    【解説】 王維(699-761)は盛唐を代表する大詩人の一人。この人の詩は過去この欄で
       すでに二度鑑賞した。(平成25年9月、竹里館。平成26年6月、送元二使安西)
       今回の詩は、雑誌と題した三首連作の第二首目の作品で、旅に出ている夫の望
       郷の思いを詠じたものである。 故郷に残している妻を直接云わず、妻の居る部
       屋の窓(綺窓)の前の梅にことよせて、その消息を質すという趣向。美しく心
       暖まる佳作です。
                                        (玉井幸久)