夏日山中 李白 懶搖白羽扇 裸體靑林中 脱巾掛石壁 露頂灑松風 (PCにない旧字は常用漢字を 用いています)
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鈴木栄次氏画 |
【通釈】 起句 扇を使うのさえもけだるい暑さ、 承句 青々とした林の中にすっぱだかになる。 転句 ずきんもぬいで石の壁に掛け、 結句 頭のてっぺんをむき出して涼しい松風を吹きかけさせる、この心地よさ。 【語釈】 白羽扇 白い鳥の羽で作ったうちわ。この詩では承句の青林と対比させて涼しさを演 出している。 搖 ゆるがす。ここでは扇であおぐこと。 懶 ものうい、けだるい。 裸體 はだか。はだかになる 靑林 青々とした林。 巾 ずきん。 露頭 頭のてっぺんをあらわにする。 灑 そそぐ。上からそそぎかける。 【押韻】 平声 、東韻、 中、 風。 【解説】 李白(701-762)は、杜甫と並び、盛唐を代表する大詩人。 杜甫の詩聖に対し、詩仙と称される。特に絶句を得意とし、詩風は豪放絢爛。 この詩は前半で、扇の白と林の青の中、意表をつく裸体によって涼しさを強調。更に 後半の見事な対句に石壁と松風を配して酷暑の中に涼を求める作者の姿を赤裸々に詠 みこみ、読む人をも涼しくさせてくれる、李白ならではの痛快な作品です。 以上 (玉井幸久) |