【通釈】起句 貴方とお逢いした此処は草花がぼうぼうと生いしげり、
承句 きり立った崖やむらがりあつまる峰々が幾重にもかさなっている。
転句 いつの日か、又お逢いしたいが、どんな処がよいだろう、
結句 次回は、つめたい流れの切り立った岩のほとりの一本の松の下、そんな処で
お逢いしましょう。
【語釈】 鄭三 鄭は姓、三は俳行で、一族同世代の兄弟、いとこを年齢順に呼ぶ数。
鄭三の人物・経歴は不詳。
遊山 作者の廬仝が、嵩山に隠棲した隠者であったことから、遊山は単なる
山歩きではなく、鄭三が廬全を嵩山に訪ねたことを指すと解釈する。
茸茸 草が盛んに茂っているさま。
攢峯 重なり続いている峰。攢はあつまる、むらがる意。
他日 別の日。いつか。今より以前(前日)、以後(後日)どちらにも用いる。この 場合は勿論後日。
期 約束してであう。
寒流 つめたい水流。冬の川。
【押韻】 平声、冬韻。茸、重、松。
【解説】 廬仝(七九五?-八三五)は范陽(河北省)の人。
中唐末期の詩人。世の乱れを避けて嵩(すう)山の小室山に隠棲し、朝廷から招かれ
たが出仕しなかった。詩に巧みで韓愈の知遇を得た。
此の詩は恐らくは、鄭某が廬仝の隠棲する嵩山を訪ね、意気投合し、再会を期して
別れた時の喜びを詠じたものであろう。 次回は嵩山の更にすばらしい処に御案内
しましょうと云っているのである。 隠者の面目躍如たる清らかな佳作です。
(玉井幸久)
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