【通釈】 起句 醸したばかりのにごり酒と、
承句 (それを温める為の)赤土で作った小さな炉も出来上った。
転句 今夜の空は雪の気配、
結句 どう?(一緒に)一杯やりませんか。
【語釈】 問 たずねる。聞く。
劉十九 劉は姓。白居易の友人。名は不詳。
十九は排行(一族中の兄弟・いとこを年齢順にならべた順番)
綠螘 綠蟻とも書く。美酒の異称。
螘(蟻)は酒の表面に浮ぶ滓をいう。
新醅酒 かもしたばかりのにごり酒。
新は・・・したばかりの意。
醅はにごり酒、どぶろく。
紅泥 赤色の粘土。これで炉を作る。
綠螘の対語として用いた。
晩來 夜になって、今夜は(來は助辞)
能・・・無 しませんか、どうですか?。勧誘の意。
【押韻】 平声、虞韻。爐、無。
【解説】 白居易は中唐を代表する詩人。この人の詩は既に度々鑑賞しました(平成28年6月
對酒・仝10月村夜・29年2月夜雪・30年8月苦熱題恒寂師禪室)。
白居易は元和5年(815)44歳の時、江州司馬に左遷され、足掛け5年間江州(江西
省九江)に滞在した。この詩はその頃の作で、近くに住む親しい友人劉某を雪の夜、
酒に誘った心温まる作品で、一筆の封を持たせて使いの者を走らせる風景を想像す
ると面白い。
詩は小品ながら美事な構成で、起承句は美しい対句とし、起句の酒、承句の暖かい
火炉に対し、転句で屋外の雪を配し、結句ではややくだけた口語調で一杯どうですか
と誘う口調は正に白居易ならではの手法といえます。
白居易の深い友情の詩の絶品です。
(玉井幸久)
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