中国語による上の詩の朗読朗読
牛山香流氏画


    【通釈】 起句 此処、はなれの部屋は静まりかえり、夏用に敷いたござが清らかですがすがしい
        承句 庭のザクロは樹一面に花を開き、簾を透して赤い花の色がはっきりと見える。
        転句 樹の影が庭の地面を掩い、日はまひるどき。
       結句 昼寝からふと目を覚ますと、枝を渡る鶯の声が時どき聞こえてくる。

    【語釈】
夏意  夏のおもむき
       別院  別に建てた建物。はなれ。
       別院  別に建てた建物。はなれ。
       深深  静まりかえっているさま
       夏簟  夏に用いる敷物。たかむしろ。ござ。簟は、竹や藺(いぐさ)で編んだむしろ。
           ござ。
       石榴  ザクロ。夏の初、深紅色の花を開き、秋に実を熟す
       當午  正午。太陽が真南に来たこと。午は十二支のうま。時刻では午后零時。
           方位は正南。
       流鶯  枝から枝へ飛び移って鳴く鶯。

    【押韻】 平声、庚韻、淸、明、聲。

    【解説】 蘇舜欽(1008‐1049)、は北宋の人。字は子美。 若くして慷慨、大志あり、進士に
       及第、累進したが、後失脚。蘇州に寓居。滄浪亭を作り、自ら滄浪翁と号した。
       よく古文、歌詩を作り梅堯臣と詩名を等しくした。
       この詩は初夏のまひる時。恐らくは滄浪亭のはなれに冷ややかなござを敷いての昼寝
       から覚めて、ふと鶯の声を聞くという趣向。作者の悠々たる生活ぶりをさらりと詠じ
       たもので、一服の清涼剤ともいえる清らかな美しい小品です。
                                      (玉井幸久)