絶句 僧顯萬 萬松嶺上一間屋 老僧半間雲半間 五更雲去逐行雨 囘頭却羨老僧閑 (PCにない旧字は常用漢字を 用いています)
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牛山香流氏画 |
【通釈】 起句 万松嶺の頂きのほとりにある、ひと間だけの小さな庵 承句 そのひと間の半分に、老いた私が棲んでおり、残りの半分は雲の棲み家。 転句 朝、夜明け前になると、雲は出かけて行き、山に降る雨を追いかけながら、 結句 ふりかえって、この老僧の 【語釈】 萬松嶺 山の名、今の浙江省、杭州市の南にある。 一間屋 ひと間だけの庵。 五更 午前四時頃。更は漢代以後、夜を五つに区分した時刻の称呼。 行雨 降る雨。 却 かえって。悠然たる雲は古来人の羨む対象であるのに、逆にの意。 【押韻】 平声、刪韻、間、閑。 【解説】 顯萬は南宋の僧侶。この詩は万松嶺上の小庵に独り棲む自らの生活ぶりを詠じたもの。 雲を擬人化して、一室に共に棲むという面白い発想は、唐の陸亀蒙(唐末の隠士、蘇 州の人)の次の詩に基づくもの。 山中僧 手関一室翠微裏 日暮白雲棲半間 日暮白雲 白雲朝出天際去 白雲朝に出でて天際に去るも 若比老僧猶未閑 以上 (玉井幸久) |