寒夜   杜秉

   寒夜客來茶當酒

   竹爐湯沸火初紅

   尋常一樣窗前月

   纔有梅花便不同

   (PCにない旧字は常用漢字を
   用いています)



            

    

     (かん)()   杜秉(とへい)

  (かん)()(かく)(きた)って(ちゃ)(さけ)()

(ちく)()()()いて()(はじ)めて(あか)

尋常(じんじょう)一様(いちよう)(そう)(ぜん)(つき)  

  (わず)かに(ばい)()()って便(すなわ)(おな)からず


    

    
中国語による上の詩の朗読朗読

飯島敏雄画


    【通釈】 起句 寒い晩に来客があり、酒を出したいところだが、代わりに茶でもてなすこととした。
        承句 竹を編んだ茶炉にかけた茶釜の湯も沸き、火も赤く盛んにおこってきたばかり
        転句 おりから窓辺にさして来た月は、格別ふだんと変った月ではないけれど、
       結句 そこに一枝の梅の花があるお蔭で、今夜の清談が特別に心地よいものとなっている
          のだ。


    【語釈】 
寒夜 寒い夜。冬の夜。
             茶當酒 酒の代りに茶を出す。
             竹爐 竹を編んで作った茶炉。
             尋常一樣 普通で格別他と変りがない。

             纔 やっと。かろうじて。
               便 すなわち。すぐに。
      
    【押韻】 平声 、東韻、  紅、 同。
       起句は踏み落とし。


    【解説】 作者は宋の人、字は小山(しょうざん)。
       この詩は、寒夜に訪れた客に熱い茶を入れ、暖炉を擁してもてなした様子を技巧を弄
       せず淡々と詠じたもの。
       おりから窓にかかる月と、月光に映える一枝の梅花を前にしての二人の清談の様子が、
       梅の香りと共にせまってくるような作品で、同時に作者の清らかな風流心がしのばれる、
       心暖まる佳作です。

                                       以上
                                         (玉井幸久)