過南鄰花園 雍陶 莫怪頻過有酒家 多情長是借年華 春風堪賞還堪恨 纔見開花又落花 (PCにない旧字は常用漢字を 用いています) 怪しむ莫かれ頻りに酒有る家に過ぎるを 多情長に是年華を借しむ 春風は賞するに堪え還恨むに堪えたり 纔かに開花を見れば又落花
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鈴木栄次氏画 |
【通釈】 起句 しきりに酒家に立ちよるを怪しまないでほしい。 承句 物事に感じ易い自分は、いつも月日の過ぎてゆくのを惜しんで、その憂いを まぎらわせようとしているのだ。 転句 春風は、ほめたたえ楽しむべきものであるが、またうらめしいものでもある。 結句 やっと花を咲かせたかと思うと、すぐにまた花を散らせてしまうのだ。 【語釈】 過 よぎる。立ちよる。 多情 物事に感じやすいこと。 長 とこしえに。常に。 借年華 月日の過ぎ易いのをおしむ。年華は歳月、月日。 纔 やっと。かろうじて。 【押韻】 平声 、麻韻、 家、 華、 花。 【解説】 雍陶は晩唐の詩人。成都(四川省)の人。字は國鈞。大和(827‐835)の間に進士及第。 この詩は惜春の詩であると同時に歳月の経過のはやいことを歎じたもの。 待ちに待った春が訪れたかと思うと、見る間に過ぎてゆくさまを、春風の仕業に仕立て 賞し又恨むと詠じた手法は見事で、美しく味わい深い作品となっています。 以上 (玉井幸久) |