「 旅館寒燈独不眠 客心何事転凄然 故郷今夜思千里 霜鬢明朝又一年 |
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國田公義氏画 |
【通釈】 起句 旅館のさむざむとした灯火のもと、ひとりなかなか眠られない。 承句 旅にある身の思いは、どうしたことか、いよいよ寂しさがつのる ばかりである。 転句 この大晦日の夜、千里をへだてた故郷を思いつつ、 結句 鬢の白くなったこの身は、明日の朝になれば、また一つ旅先で年 をねるのだ。 【語釈】 寒燈 さびしい灯火。 客心 旅人の思い。 轉 うたた、いよいよ、ますます。 凄然 寂しいさま、いたましいさま。 霜鬢 霜のおうな白いびんの毛。 【押韻】 平声一先韻、 眠、 然、 年。 【解説】 高適(707-765)は盛唐期の詩人。渤海(山東省)に生れ、若くして辺 塞の地を遊歴。50歳を過ぎてから詩作を始め、たちまち文名があがり、 李白、杜甫等とも親交があった。 この詩は、壮年期を過ぎた頃の作者が旅先で大晦日を迎えた時の眠れぬ 夜の旅愁を詠じたもの。千三百年を隔て、なお、現代人の心に響きます。 尚、転句「故郷今夜千里を思わん」と読み、「故郷の妻子達も、今夜は 千里の旅先に居る自分のことを思い、うわさしていることであろう」と 解釈する説もあります。 (玉井幸久) |