【通釈】 起句 寝台の前まで射しこんでいる光、
承句 ふとこれは地上に霜ではないかと疑う程白く輝いている。
転句 この静かな秋の夜、頭をあげては山の端にかかる月をながめやり、
結句 頭をたれては、故郷に思いをはせるのだ。
【語釈】 静夜思 静かな(秋の)夜の思い。
牀前 寝台のまえ。
疑是 ・・・ではないかしらと思われるほどである。
望 遠くをながめやる。
低頭 頭をたれる。
【押韻】 平声七陽韻、 光、霜、郷。
五言絶句は普通 承句と結句に押韻するが、この詩では起句も押韻している。
又、承句と転句では平仄の規則を外している。
【解説】 盛唐第一の詩人 李白の代表作のうち、最も人口に膾炙した名作の一つです。
秋の夜の、寝台にさしこんだ月光の下で、頭をたれて故郷を思う情景を、よどみ
なく美しく歌い上げた手法、特に転・結句は見事です。
李白(701-762)は西域の生れとされているが、幼くして蜀(四川省)に移り
住み、若い時から詩書百家の学に通じたとされる。25歳の時
三峡を下って蜀を
出、諸国を歴遊、多くの詩人と交わり、多くの名詩を残した。特に絶句にすぐれ、
李絶杜律(李白は絶句、杜甫は律詩にすぐれるの意)と、杜甫と並び称せられる。
この詩は、作者が故郷を出て、洞庭湖の北 安陸地方に滞在していた31歳頃の作
とされています。
(玉井幸久)
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