写真提供:飯島敏雄氏 | 「江村即事」 司空曙 釣罷歸來不繫船 江村月落正堪眠 縱然一夜風吹去 只在蘆花淺水邊 |
【通釈】 起句 釣りをやめて帰って来ても、船を繋ぎとめたりしないで、乗り捨てのままにする。 承句 川辺の村に月が落ちて、丁度眠る時刻だ。 転句 もし夜のうちに風が出て、船が吹き流したところで、 結句 この蘆の花のしげみの、どこか浅瀬の辺りに漂っているだけのことだから。
【語釈】 江村 川ぞいの村。 【押韻】 平声 一先韻。 船、眠、邊。 【解説】 江村での閑適の生活をすらりと詠じた佳作で、作者の人柄がにじみ出ています。司空曙(740-?)は廣平県(今の河北省)の生れ、770年頃科挙及第の後、左拾 遣、節度使幕僚等を歴任。 潔癖な性格で権勢に媚びず、家は貧しかったが平然としていたという。その詩は幽閑で 清革と評され、大暦十才子の一人に数えられている。 (玉井幸久) |