「 弘道館中千樹梅 淸香馥郁十分開 好文豈是無威武 雪裏占春天下魁 |
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國田公義氏画 |
【通釈】 起句 弘道館の庭に植えた千本もの梅の木は、 承句 いま清らかな香り馥郁と十分に開いている。 転句 梅は古来 文を好む木と呼ばれているが、どうして文だけで武が 無いことがあろうか、 結句 雪の積もる中で、ほしいままに春を独り占めして天下のさきがけ となるのは、強く勇ましい力が無くては出来ないことなのだ。 【語釈】 弘道館 水戸藩の藩校の名。 馥郁 香り高いさま。香気の盛んなさま。 好文 学問を好む。ここでは好文木の略。 好文木は梅の別名。晋の武帝の故事による。晋の武帝が学問を好ん でいた時は梅が開いたが、学問をやめると開かなくなった。 豈 反語。どうして・・であろうか、そうではない、の意。 威武 強く勇ましい力。 雪裏 雪の積もった中。又 雪の降る中。 魁 さきがけ。かしら。 【押韻】 平声十灰韻、 梅、 開、 魁。 【解説】 今回は日本人の作品です。 徳川斉昭(1800-1860)は江戸時代末期の水戸藩主、烈公と呼ばれ、尊 王攘夷をとなえた。藤田東湖等を重用して、藩政改革を断行、水戸に藩校 弘道館を設立、文武両道にわたり子弟の教育に力を注いだ。 この詩は、その庭に植えた梅にことよせて、水戸教学への思いを詠じたも ので、非常に香り高い傑作です。 (玉井幸久) |