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第9回自詠自書の会・拡大作品展 作品募集要項掲載 締切4/20
オンライン吟行会「雪国」 2/24(月)開催しました。
令和7年度漢詩入門講座開催 予定 4/2,9,16,23,5/14 於:神奈川近代文学館
令和6年度研修会 12/18 受賞作品
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㊗令和6年度 さまざまな漢詩大会で活躍! 神漢連会員受賞作品
今月の漢詩鑑賞 25.3 (過去の作品は アーカイブ に掲載中です)

画 犬飼勇雄氏
室橋幸子氏による中国語の朗読はこちらをご覧ください。
【通釈】
起句 庭に咲く芍薬の花はつやっぽく美しいが品が無く、
承句 池に咲く蓮(はす)の花はきよらか過ぎてお色気が少ない。
転句 ただ牡丹のみは、真に国一番の美人ともいうべき美しさ。
結句 花が開くころともなれば、都長安のまちじゅうを騒がせるのだ。
【語釈】
牡丹…ボタン属の落葉低木。四~五月頃芳香ある大輪の美しい花をつける。原産は中国北部。山西省の山地に自生していたものが唐の則天武后の頃長安に移植され、貴族邸や寺院の庭で観賞用に栽培されて異常なブームを呼んだ。白居易はその詩「牡丹芳」で「花開き花落つ二十日、一城之人皆狂うが若(ごと)し」と詠んだ。
芍藥…ボタン属の多年生植物。花や葉は牡丹に似ている。
妖…なまめかしい。つやっぽく美しい。
格…品格。
芙渠…蓮。
情…ふぜい。味わい。ここでは女性の色香。
國色…国中で第一番の美人。
京城…みやこ。ここでは長安のまち。
【押韻】
平声 庚韻。情、城、
起・承句は対句とし、起句は踏み落とし。
【解説】
劉 禹錫(772―842)は中唐の詩人。貞元9年(793)21歳の若さで進士及第。柳宗元とは生涯の親友であり、又晩年には白居易と親しく交った。この人の詩は此の欄で已に数多く鑑賞している。此の詩は、牡丹 芍薬 芙渠をそれぞれ美人になぞらえて品評した面白い作品です。先ず「妖として格無し」と評した芍薬については詩経の中で最も恋愛詩の多いことで知られる「鄭風」の溱洧(しんい)詩に、春の野に男を誘い恋を楽しむ女に男が芍薬の花を贈る句があってみだらな女を想わせ、又「情少なし」と評した芙渠には楚辞の「離騒」に「芙蓉を集めて裳と為す」の句が有って孤高の人を連想させる。これに対し牡丹については、この花の美しさを楊貴妃の美貌になぞらえた李白の清平調詞が当時なお記憶に新しかった。
これらを下敷きとして品評し牡丹を国色と賞しつつも、その花の美に都長安の人士が狂う風潮をちくりと揶揄したものと見ることが出来ます。いかにも劉禹錫の作らしい味わい深い作品です。以上(玉井幸久氏)