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今月の漢詩鑑賞 26.7(過去の作品は アーカイブ に掲載中です)

画 犬飼勇雄

室橋幸子氏による中国語の朗読はしばらくお休みします。

【通釈】
 起句 畑では作男が架(たな)によりそって、黄色に熟した瓜を収穫しており、
 承句 小道では村の娘たちが籬(まがき)の側で、あさがおの花を摘んで遊んでいる。
 転句 役人や商人達の住む町中では、まだ三伏の暑さが残っているけれども、
 結句 秋の風光はもうまっ先に田舎暮らしのわが家にやって来た。

【語釈】
 園丁…庭や畑を作るために雇われている使用人。作男。
 架…たな
 黃瓜…胡瓜(きゅうり)とするのが一般的であるが、ここでは黄色に熟した瓜と解す。
 村女…村のむすめ。
 籬…まがき。 竹や柴を粗く編んだかき。
 碧花…草の名。牽牛花(あさがお)の類。
 城市…まち。城壁で囲まれた町。
 餘…残
 三伏…夏の暑い時。 夏の土用を初伏、中伏、末伏の三期に分けた称。伏とは火気(火の気)を恐れて金気(秋の気)が伏蔵する意。
 秋光…秋の風光。 秋の景色。 秋の日光。
 野人…官に仕えない一般の人。 在野の人。

【押韻】
 平声 麻韻。瓜、花、家、

【解説】
 陸 游(1125―1209)は南宋、越州山陰(浙江省・紹興)の人。字は務観、號は放翁。范成大、楊萬里とは友人でこの三人が南宋の三大詩人である。当時南宋は北方の金の圧迫に苦しんでおり、陸游は一生を通じ死ぬまで金に対する徹底抗戦をとなえ、後年憂国詩人と呼ばれている。三十歳の時科挙試験に応じ、首位の成績をおさめたが、金に対する和平論者の首相秦檜(しんかい)の妨害で落第とされ、秦檜の死後ようやく進士の資格を得て官に就いた。その後、和平派・抗戦派間の政争に因り昇進・免職をくり返したが、晩年の二十年は殆ど官界から斥けられ故郷紹興の地にて自ら耕し国を憂えつつ85歳の生涯を終えた。この詩はその在野時代の作で官を斥けられても敢えて恨み言を言わず、胸中の心境を僅かに結句の「野人」の一語に托し在野の生活を楽しんでいる様子を詠じたもの。陸游の当時の心境をしのばせる清らかな作品です。詩は起句・承句と転句・結句をそれぞれ対句とした珍しい構成となっています。以上(玉井幸久氏)