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漢詩講演会「杜甫と家族 日常を愛し日常を詠う」高芝麻子先生 6/5開催

令和8年度漢詩入門講座 開講中 4/8,4/15,4/22,5/13,5/27

2026.2.23 第16回オンライン吟行会「修善寺」 

令和7年度全国漢詩大会 会員受賞作品  

今月の漢詩鑑賞 26.3 (過去の作品は アーカイブ に掲載中です)

画 犬飼勇雄

室橋幸子氏による中国語の朗読は今しばらくお待ちください。

【通釈】
起句 三月も今日はまさしく三十日となり、
承句 春の風景は、春の詩を作ろうと苦心している私に別れを告げて去ってゆこうとしている。
転句 貴方と一緒に今夜は睡らずに作詩を続けましょう。
結句 明け方の鐘が鳴るまでは、まだ春なのですから。

【語釈】
晦日…みそか。 月の最終日。
劉評事…人物の詳細は不明。評事は官名、刑獄を評決するを司る。
正…まさしく。 ちようど。 たしかに。
當…あたる。 あう(会)。
風光…風景。 景色。 ながめ。
苦吟…苦心して詩歌を作ること。
須…もちいる。 もとめる。
曉鐘…夜明けを告げる鐘の音。
猶…まだ。 やはり。

【押韻】
平声 眞韻。身、春、起句は踏み落とし。

【解説】
賈 島(779―842)は中唐の詩人。范陽(今の河北省)の人。若くして出家して僧となり無本(むほん)と号したが後、韓愈に認められて還俗した。韓愈との出会いは「推敲」の故事として知られる。〈附記〉参照
進士に及第したが官途には恵まれず、地方の小官で終った。本人は苦吟の人として知られ、その詩風は友人の孟郊の詩風と併せて「郊寒島痩」と評せられている。この詩は、暦の上の春も正に終わろうとする三月三十日友人の劉某に贈つたもので、春を惜しんで苦吟する自らの感傷を詠じたもの。春の最後の夜を眠らずに共に詩を練りましょうという、苦吟の人賈島らしい発想の一品です。

〈附記〉
推敲の故事
賈島が未だ無名であつた頃、科挙に挑まんとして上京していた時、ある日驢馬に乗り洛陽の街を行き乍ら「僧は推(お)す月下の門」という一句が頭に浮かんだ。更にこの句中の「推す」を「敲(たた)く」と改める案が浮かび、夢中で推すと敲くを手まねし乍ら進むうち、思わず都の長官の韓愈の行列に衝突してしまつた。韓愈はこれを咎めること無く、賈島の話を聴き「敲く」がよいと助言し、轡を並べて帰つた。この句を含んだ詩「題李凝幽居」(左記)は全唐詩に収録されている。
  題李凝幽居  李凝の幽居に題す   賈 島
 閒居少鄰並  閒居 隣(りん)並(へい)少なく
 草徑入荒園  草徑 荒園に入る
 鳥宿池邊樹  鳥は宿る池辺の樹
 僧敲月下門  僧は敲(たた)く月下の門
 過橋分夜色  橋を過ぎて夜色分かれ
 移石動雲根  石を移りて雲(うん)根(こん)動く
 暫去還來此  暫く去りて還(また)此(ここ)に来れば
 幽期不負言  幽期 言(げん)に負(そむ)かず
 以上(玉井幸久氏)